前回からの続きです。
前回は碓氷峠の麓、
横川にある碓氷峠鉄道文化むらに隣接する
安中市観光機構のオフィスを出発して、
旧信越本線の上り線(高崎方面)を遊歩道に整備した
アプトの道を歩いて途中の峠の湯まで登ってきました。
ここから先は、いよいよお待ちかね
廃線跡を歩いて終点の軽井沢まで登っていきます!!
▲峠の湯の分岐から
左の線路が鉄道文化むら〜峠の湯まで
旧信越本線の下り線を使って運行されているトロッコ列車の線路、
そして奥の茂みの中に続いている線路がこれから歩く碓氷新線下り線(軽井沢方面)です。
余談ですが、
今後は上り線・下り線というワードがちょくちょく登場しますので、
混乱しないように取り纏めておきます。
そもそも、鉄道における上り線や下り線は坂道のことではなく、
都市部に向かう列車を「上り列車」といい
反対に都市部から離れて行く列車を「下り列車」と言います。
よく地方から東京に出てくることを「上京する」と言いますが、
上京の「上」の字も同じで意味で、
それは鉄道においても同じように使います。
碓氷峠区間においては、
横川・高崎・大宮・上野方面が上り列車(上り線)になり、
軽井沢・小諸・上田・長野方面が下り列車(下り線)になります。
そして、勾配は
横川から軽井沢までが登り勾配になるので、
下り線(軽井沢方面)が登り勾配になり、
上り線(横川方面)が下り勾配になります。
▲碓氷新線下り線(峠の湯付近から横川方面を見る)
午後13時過ぎ峠の湯付近から碓氷新線の下り線に入りました。
整備されたアプトの道とは違い草がたくさん生えています。
碓氷峠(碓氷線)では
アプト式時代に使っていた区間を旧線、
アプト式廃止後に使い始めた区間を新線と呼びます。
新線も今では廃線になってしまいましたが、
当時からの言い方で現在でもそう呼ばれています。
そして、アプト式時代に使われていた区間を整備して
ハイキングできるようにしたのがアプトの道で、
横川から峠の途中にある熊ノ平駅まで続いています。
アプトの道は峠の湯付近までは新線と同じルートでしたが、
ここから先はから新線と別れて別の場所を進みます。
先ほども書きましたが、
この廃線ウォークの醍醐味はここから先!
普段は立ち入り禁止になっている碓氷新線の区間です!!
ここから先は実際の線路やトンネル内を歩くのでヘルメットとライトを装備して進みます。
▲使われなくなって23年間。草が生えた碓氷新線下り線。
廃線ウォークを開催するようになって
だいぶ手入れをしてるようですが草が生えています。
草が生えている線路は
廃線らしい感じがして個人的に凄く好きです。
人間が手を加えた領域に自然の力が忍び込んできている感じが最高です。
▲立ち入り禁止のバリケードの先に進んでいきます。
碓氷新線はこの先、
上り線と下り線が少し離れた場所を走っているので、
単線のような風景になります。
この先に出てくるトンネルもお互い別々になっています。
▲下り線1号トンネル付近
少し進むと、
下り線1号トンネルの場所に着きました。
右に写っているのが碓氷新線上り線です。
碓氷峠はアプト式の時代から
軽井沢までトンネルが連続する区間でした。
新しく作られた新線でもそれは同じで、
上り線で11のトンネル、
今回の下り線ではなんと18ものトンネルがあります。
その1個目、下り1号トンネルに入っていきます。
とは言っても下り1号トンネルは75Mの長さしかないので、
入ってすぐに出るタイプのトンネルです。
▲下り1号トンネル内
初めて入るトンネルにテンションが上がります!
もちろん他の参加者の皆さんもテンションが上がっていました笑。
▲下り1号トンネル出口付近から軽井沢方面を見る
トンネルの出口から木が張り出している感じが良いですね。
皆さん徐ろに写真を撮っていました。私もです笑!
▲下り1号トンネル出口より先、軽井沢方面を見る
下り1号トンネルを出ても
しばらくの間は地上区間を歩きます。
この区間は隣に道路が並走して走っていて、
碓氷峠現役時代は
峠を登り下りする列車を撮影する定番スポットだったようです。
有名な最大勾配66.7パーミルの勾配標も
この区間の上り線にありロクサンことEF63と一緒に撮影された写真もよく拝見します。
というのも、ここから先はトンネルが連続する区間に入ってしまうのと、
道路から離れた場所を線路が走っているので、
横川〜軽井沢で走行写真や動画を撮るには、
横川駅周辺かこの先にある新碓氷川橋梁、熊ノ平、軽井沢周辺くらいしかなかったようです。
そうそう、国鉄・JR最大勾配66.7パーミルで有名なこの碓氷峠ですが、
66.7パーミルの勾配があるのは上り線(下り勾配)のみで、
峠を登る下り線の最大勾配は66.4パーミルなんです。
0.3パーミルしか違わないので
これ程までの急勾配なら、
もはや誤差の範囲と言って良いかもしれませんが、
66.7パーミルの実際の勾配を歩きたい方は
軽井沢発の上り線の廃線ウォークに参加されると良いでしょう。
わたしも今度は上り線のイベントに参加してみたいと思っています。
▲同じ場所から今度は上り線区間(軽井沢方面)
下り線は比較的木々もなく開けていましたが、
上り線の方は23年の月日を感じさせる木々の覆いっぷりでした。
当時の写真や動画を見ると
この区間は木なんて一本も見当たらないのですが、
廃線から23年の月日で見事に自然に還ってしまったようです。
ガイドの方曰くこの区間の上り線の手入れは大変だそうです。
▲下り線から上り線の線路見る
完全に森の中に線路がある感じになっています。
森林鉄道みたいですね。自然の力は凄いです。
しばらく進むと下り線2号トンネルが見えてきます。
▲下り線2号トンネル入り口
この下り2号トンネルが下り線の中で一番長いトンネルになります。
トンネルの長さは1,215Mもあり、
このトンネルを出ると有名な新碓氷川橋梁に出てきます。
▲下り2号トンネル内
長いトンネルというだけあって真っ暗です。
ライトを消すと何も見えません。自然の暗室ですね。
▲保線員が使っていた列車待避用の穴
▲保守点検の際につけたサイン
外に野ざらしになっているわけではないので
現役当時の状態で残っています。
入り口からしばらく進むと
線路はバラスト軌道(砂利の線路)からスラブ軌道(コンクリート道床の軌道)に変わりました。
▲バラスト軌道からスラブ軌道へ
▲スラブ軌道が続きます(下り2号トンネル内)
線路の中央は側溝のような溝があり、
おそらくトンネル内に入り込んだ雨水などを流すために設けてあるのでしょう。
こうしたトンネルの中の構造が見れるのも廃線ウォークならではです!
コンクリートの床になったおかげでかなり歩きやすくなりました。
バラストの上は歩き辛いんですよね。
▲出口までの距離を示す案内
▲鉄道電話
▲電気設備
トンネル内には様々な設備があります。
もちろん今は使えません。
ここでガイドの方から
トンネルに内にまつわる面白いものの紹介がありました。
それがこちら!!
▲空き缶
トンネル内に落ちていた空き缶。
実はこの空き缶、
どうやら碓氷峠が現役時代の時に
列車の窓から投げ捨てられた空き缶だそうです。
当時の列車は窓が下から開くタイプの車両だったので、
ものを簡単に投げることが出来たようです。
もちろん列車からものを投げ捨てちゃダメですよ!
ただ、時代という見方をすると
この空き缶も面白く見えてきます。
なんの車両から投げ捨てたのかも気になるところですね。
特急型の189系は窓が開かないので、
普通列車の115系か急行の169系あたりかな。
もしかしたら普通運用で入っていた185系!?
いや、客車列車の可能性もあるな〜笑。
な〜んて妄想するのも楽しいですね。
もう一度言いいますが、投げ捨てしちゃダメよダメダメ!
安中市では出来るだけ当時のまま
保存をしていきたいとのことで、
こうして投げ捨てられた空き缶も敢えてそのまま残しているそうです。
▲長い間、陽の目を見ることなく置き去りにされた空き缶
長かった2号トンネルでしたが、
ようやく出口の光が見えるところまで歩いてきました。
▲下り2号トンネル出口
長い間、暗い場所にいたので外の光が眩しく感じます。
この先が有名な新碓氷川橋梁です。
▲光がトンネル内に差し込みます(下り2号トンネル出口)
木々が架線柱に纏わり付くように茂り
やはりここは廃線区間だと再認識させられます。
▲新碓氷川橋梁(下り線)
今回の廃線ウォークのハイライトのひとつ
新碓氷川橋梁の上に出てきました。
ここで少々の休憩と写真撮影タイムになりました。
いまいる新碓氷川橋梁は延長形式100.8Mの鉄筋コンクリートのアーチ橋で、
昭和38年3月31日に竣工しました。上り線と下り線の2つの橋があります。
軽井沢に向かって進んでいくと左手に
アプト式時代に使われていたレンガ造りの碓氷第三橋梁(めがね橋)が、
右手には上り線の新碓氷川橋梁が見えます。
▲碓氷第三橋梁(めがね橋)
先ほどいた峠の湯から別れたアプトの道を
進んで行くと上の写真に写っているめがね橋に出てきます。
また、国道18号線旧道からもアクセスができます。
めがね橋は国の重要文化財にも指定されている
明治25年に完成したレンガ造りアーチ橋で、
ハイカーだけでなくドライブで通った人や観光客など
大勢の人が見物にやってきます。
普段は立ち入り禁止の碓氷新線から
ヘルメットを被った人たちがぞろぞろ出てきたので、
めがね橋にいた人たちが不思議そうな顔でこちらを見ていました。
手を振ったら振り返してくれました!
▲碓氷新線上り線 新碓氷川橋梁
めがね橋から反対に目を向けると
碓氷新線上り線の新碓氷川橋梁が見えます。
橋というのは本来は水平に造るのが当たり前ですが、
碓氷峠の急勾配では平坦に橋を架けてしまうと
平坦に進んだ分、その分、勾配分のルートも伸びてしまうため、
最短距離で横川〜軽井沢を直結させるには
橋自体も勾配のある造りで建設されました。
写真で見ても判りますが、
ものすごい勾配で登っています。
▲新碓氷川橋梁上に設置された脱線防止ガード
橋の上で列車が脱線して事故が起きないように
レールの間に脱線防止用のガードが設置されていました。
▲新碓氷川橋梁下り線(横川方面 2号トンネル出口)
▲新碓氷川橋梁下り線(軽井沢方面 3号トンネル入口)
新碓氷川橋梁での休憩を後に
また下り線を軽井沢方面へと登っていきます。
今度は3号トンネルに入ります。
3号トンネルは2号トンネルに次いで長いトンネルで、
全長946.5Mあります。
この3号トンネルを越えると
横川〜軽井沢で唯一の平坦な区間、
熊ノ平にたどり着きます。
3号トンネルも2号トンネルと同様に
トンネル内部はコクリート道床のスラブ軌道になっています。
▲熊ノ平信号場への中継信号機
現在では電気は来ていませんが、
このイベントのために
特別に整備をし発電機を用いて、
トンネル内の明かりや信号機の点灯を行ってくれます。
これは廃線ウォークを開始した当初は
出来なかったようですが、
イベントに参加した鉄道関係の方が協力してくれて、
点灯できるように整備をしてくれたのだそうです。
信号機の球も当時のものを
そのまま使っているそうで、
現在ではLEDのタイプが主流ですが、
電球らしい「ふぁ〜」っとした光り方で点きました。
▲出口案内標と熊ノ平信号場への中継信号機
今までは真っ暗なトンネルの中を
ヘッドライトの明かりのみで歩いてきましたが、
トンネル内が点灯すると周囲も見渡せるので
トンネル内の構造や勾配の感じがしっかり視認できます。
現役時代も保線作業を行う際は
こうした長いトンネル内では、
トンネルの照明を点けて作業されていたそうで、
いま自分が見ている景色と同じ光景の中
保守点検をしていたかと思うと考え深い感動的なものがあります。
▲トンネル内の勾配(下り3号トンネル)
トンネル内も物凄い勾配で登っています。
これは3号トンネル出口付近で
歩いて登ってきた勾配を振り返って撮影しました。
この先(写真で言うと背後)が熊ノ平信号場なので
手前は緩やかな勾配になっています。
▲3号トンネル出口付近で上映会
3号トンネル出口付近で
トンネルの壁にプロジェクターを投映して
碓氷線現役時代の映像を見るという
粋な演出がありました。
ちゃんと場内信号も点灯しています!
▲3号トンネル出口
午後15時ごろ熊ノ平信号場に到着しました。
先ほども書きましたが、
この熊ノ平は横川〜軽井沢の間で
唯一の平坦な場所で、
アプト式で運行されていた際は
この場所は駅として使われていましたが、
新線に移行してからは信号場に降格されました。
▲熊ノ平 横川方面にある3つのトンネル
アプトの道つまり旧線と新線は
峠の湯で別れてから
別々の場所を通っていましたが、
この熊ノ平でまた合流します。
左のトンネルが新線上り線の2号トンネル
中央のトンネルがいま歩いて出てきた新線下り線の3号トンネル
右のトンネルが旧線(アプトの道)のトンネル
以上のようになります。
上り線と下り線でトンネルの番号が違うって話ですが、
これは前にも書きましたように
上り線は全部で11のトンネルがあるのに対して、
下り線では全部で18もトンネルがあるので、
同じ場所でも上りと下りでトンネルの番号が違ってくるわけです。
▲熊ノ平信号場内の様子
アプト式時代碓氷峠は単線だったので、
この熊ノ平で列車の交換を行っていました。
その名残もあり両側にプラットホームが残っています。
新線になってからは信号場に降格したので、
列車は止まらなくなりましたが、
急勾配とトンネルが連続する碓氷峠で、
唯一の平坦地上区間であったことから
廃止前には大勢のファンが峠を登り下りするロクサンの
走行写真や動画を撮るポイントとしても賑わった場所です。
さて、13時に峠の湯を出発して
2時間少々で熊ノ平まで来ました。
これで全行程の半分近くまで進んできたことになります。
熊ノ平の標高が687M、
出発地点の横川駅の標高が392M、
峠の湯の標高が479Mなので、
峠の湯から熊ノ平まで208M標高を上げたことになり、
横川からだと295M標高を上げたことになります。
この辺まで来ると空気が変わってきた感じがします。
麓の空気から少し冷んやりした空気になりました。
ちなみに軽井沢の標高は946Mなので
まだ259M分標高を上げます。まだまだ半分です。
この熊ノ平でまた少し休憩タイムが入りました。
午後15時を回ったので日もだいぶ傾き始めてきました。
次回につづく・・・。
<リンク>
【今週の1鉄】そこには、鉄路があった。
【廃線ウォーク】信越本線 碓氷峠人力踏破VOL.1
廃線ウォークについて