お待たせいたしました!
比婆荒神神楽を見る!その2です。
前回は比婆荒神神楽を知るきっかけなど、ご紹介しました。
今回はもう少し踏み込んで書いてみたいと思います。
とは言っても、神楽を正しく知るには膨大な勉強をする必要があると今回、書いていて改めて思いました。
もちろん見たり、聞いたり、自分で調べてわかったことを書いたつもりですが、中には「これはちょっと違うよ」というものもあるかもしれません。
そう言ったものは、ご教授ご鞭撻いただけますと幸いです。
では改めて、「比婆荒神神楽(ひばこうじん)」についての概要をまとめてみたいと思います。

「比婆荒神神楽(ひばこうじん)」は広島県庄原市東城町と西城町(旧奴可郡)に古くから伝わる神楽で本山三宝荒神に奉納する祖霊信仰の神楽です。
そのはじまりは定かではないようですが、東城町の栃木家には300年以上前の文献が残り、江戸時代には比婆荒神楽は盛んに行われていた記録が残っており、荒神信仰が盛んに行われていた鎌倉、室町時代にまで遡ることができるとも言われている。
比婆荒神神楽は、秋の取り入れが終わった頃から春の初め頃までの間に行われます。畑仕事ができなくなる冬時期に、娯楽としての側面も持っているようです。
毎年行われる神楽と、前の神楽を行ってから7年目、13年目、33年目にあたる年に行う式年神楽があり、前者は小神楽(一晩中)、後者は大神楽(4日間)となっているようです。
とはいえ、昨今は人口減少による人手不足や資金的な問題などさまざまな事情もあり、現在では大神楽はほとんど行われていないようです。
昔は、それぞれの地域で盛んに行われていた神楽ですが、現在では神事として行われているのは、毎年11月に東城町小奴可(おぬか)の奴可神社(ぬか)で奉納されているものだけになっています。
今回拝見させていただいたのが、その奴可神社で行われる神事「比婆荒神神楽」というわけです。
比婆荒神神楽が珍しいとされている点は、「名(みょう)」と言われる形態がそのまま継承されている点です。
名とは、一族あるいは集落・部落の単位のことです。各名に荒神が存在し、全体の信仰の中心として本山三宝荒神が存在しています。地域の祖霊神とされ、守護神・産土神になっています。
本山三宝荒神の信仰は非常に厳しく、神楽を行う際は、地域の方々(名(みょう)内の人々)が集まり、執り行われます。要するに、地域が一体となりワンチームで行うのが比婆荒神神楽なのです。
比婆地域でも古くから疫病や飢饉といった災いが荒神様の怒りだと恐れられ、鎮魂として神楽を舞うことが比婆荒神神楽の特徴であり、託宣(神がかり)の神事を伝えていることが貴重な存在とされ、広島県の神楽では唯一、1979年(昭和54年)に国の「重要無形民俗文化財」に指定された歴史を持ちます。
2025年11月15日(土)
広島県東城町小奴可の奴可神社

神楽は夜19時半ごろから始まりました。
今回の小神楽ですが、一晩中行われます。
神楽の内容は大きく前半と後半に分けられ、0時過ぎくらいに一回休憩が入ります。
前半は、比婆荒神神楽としての特徴である「七座神事(しちざ)」が行われます。
七座神事は、「打立(うったて)」「曲舞(きょくまい)」「役ざし・指紙(さすかみ)」「榊舞(さかきまい)」「茣蓙舞(ござまい)」「猿田彦の舞(さるたひこのまい)」「神迎えの舞」から構成されます。
今回は七座神事と神楽の飾りを写真と共にご紹介できればと思います。
<「白蓋(びゃっかい)」と「ちみち」>
神楽殿に吊るす神楽を行うための飾り。白蓋(びゃっかい)から、ちみちと呼ばれる障子紙を芸術品のように12本切った飾りを四方のしめ縄に結んでいます。
▲神楽を舞う天井に装飾された飾り。中央に白蓋があり、そこから、ちみちが四方へ伸びています。
白蓋は祭典の終わりに太鼓の音に合わせて揺らして踊らせ、その動きが神様がご降臨なさっているように見えるそうです。
そして、ちみちを伝って本山荒神様や八百万の神様が訪れになる儀式を行うために飾るものだそうです。
<七座神事>
●打立(うったて)
▲打立(うったて)…笛、太鼓、手打ち鐘の音合わせ、神楽うたの声合わせをする神事。「これから神楽を始めます。」の意味も込めたチューニング要素もありそうです。
●曲舞(きょくまい)
▲曲舞(きょくまい)…神楽の手振り所作の基本的な舞。扇と幣を持つ。
●役ざし・指紙(さすかみ)
▲役ざし・指紙(さすかみ)…神楽の役割をきめる舞、半紙の束を竹に挟んで舞う。
●榊舞(さかきまい)

▲榊舞(さかきまい)…榊と鈴を持って舞う。神座、神職、舞人、氏子等を清める舞。
●茣蓙舞(ござまい)

▲茣蓙舞(ござまい)…神座を清める舞。鈴、扇、ござを持ち舞う。茣蓙跳びが有名。108回跳ぶのが習わしとされるが、観客の声援に応えるように跳び続けることも。
●猿田彦の舞(さるたひこのまい)


▲猿田彦の舞(さるたひこのまい)…案人(あど)が猿田彦の神徳を述べ舞う。その後、猿田彦が太刀や長刀を持って悪魔祓いの舞いを行う。荒々しく舞、ちみちが切れ落ちたりする。
●神迎えの舞
▲神迎えの舞…七座神事最後の舞。神おろしの舞とも言われる。神職4名が冠と斎服に意義と正して厳かに行う舞。厳粛で神々しい比婆荒神神楽を代表する舞。
以上が七座神事です。
一つ一つに意味がある演目で全てが終わるまでに、5時間以上かかります。
また、神楽の合間に”はな”と呼ばれる神楽に寄付をした人に対しての披露も行われていました。
これらが終わると一回休憩が入り、後半は日本神話に基づいた演目が続きます。
わたしたちもよく知る大黒様や素戔嗚尊、八岐大蛇といったお馴染みの舞です。
(つづく)